思考ってこういうこと!? 『具体と抽象 世界が変わって見える知性のしくみ』細谷 功 【本の紹介#2】
目次
●序章 抽象化なくして生きられない ●第1章 数と言葉 ●第2章 デフォルメ ●第3章 精神世界と物理世界 ●第4章 法則とパターン認識 ●第5章 関係性と構造 ●第6章 往復運動 ●第7章 相対的 ●第8章 本質 ●第9章 自由度 ●第10章 価値観 ●第11章 量と質 ●第12章 二者択一と二項対立 ●第13章 ベクトル ●第14章 アナロジー ●第15章 階層 ●第16章 バイアス ●第17章 理想と現実 ●第18章 マジックミラー ●第19章 一方通行 ●第20章 共通と相違 ●終章 抽象化だけでは生きにくい
※太字の章の内容を取り上げてます。
P:具体と抽象、んーなんだか難しそうだね。
その本ってどんな本なの?
A:この本は細谷功さんの本でね、他の著書もオススメなんだけど、
この本は一言で言うと、人が行う「思考」について書かれているんだよ。
P:思考ねぇー、やっぱり難しそう。
A:大丈夫、大丈夫。この本の中には、表紙で書かれているような可愛らしい漫画があるから、取っつきやすい本だと思うよ...
P:そうなんだ。まあいいや、そういえばさ、この前行ったレストランの.....
PとAの会話は幾分長くなりそうなので、
これからは私、ひろタヌキが解説していきます。
具体と抽象というと、皆さんは何を思い浮かべるでしょうか。
「具体的に」、とか「抽象的に考える」
なんて言いますが、
そもそもその意味はなんでしょうか。
デジタル大辞泉より、定義を見てみます。
具体:
「物事が、直接に知覚され認識されうる形や内容を備えていること。」
抽象:
「事物または表象からある要素・側面・性質をぬきだして把握すること。」
ふむふむ、辞書らしいしっかりした説明ですね。
これによると、私の目の前にあるスマホ、布団、服、それらは具体的な物なのかもしれません。
それでは生物、というとどうでしょうか。少し範囲が広いですよね。
魚、人間、犬、猫は全て「生物」という言葉で括ることができます。
これは抽象っぽい。
本書では、「抽象化なくしては生きられない」 という序章があります。
どういう意味でしょうか。
私たちがいつも使うもの、それは何でしょうか?
スマホ?パソコン?お箸?
それらもそうですが、言葉です。
私たちは言葉を使って生きています。
言葉というのは抽象化されることで、人々の間で使われるようになっています。
現実にある物を、「言葉」という記号を通じて、私たちはコミュニケーションをしています。
これを可能にしているのは、抽象化された概念を共有していると著者は述べます。
「抽象化を利用して人間が編み出したものの代表例が「数」と「言葉」です。」
数もそうでしたね。
数を使えば、私たちは定量的な物差しを得ることができます。
例えば、お金ですね。
身の回りにあるものの価値を、数を用いることで表すことができます。
(犯罪の重さといった曖昧なものでさえ、お金で計ることができます。)
私たちの生活に必須のものですね。
具体と抽象について理解する上で大切なのが、
これです。
「「具体と抽象」という言葉自体が「相対的な関係性」を示す概念であって、絶対的な具体性や絶対的な抽象性があるわけではありません。」
つまり、どれほど対象との間で具体性があるか、抽象性があるか、によってこの言葉は用いられるということですね。
だから、生物という言葉は抽象的にも、具体的にもなることができます。
’生物’の中には、海を泳ぐ’魚’のようなものもいれば、文明を築き上げる’人間’のようなものもいる。
という文章の中では、生物はより抽象的な言葉として使われていそうです。
生物と魚を比べると、より具体的なのは魚です。
(それでは、魚とカジキマグロ、どちらがより具体的でしょうか。カジキマグロですよね。)
生物を具体的に見るときはどんなときでしょう。
’動くもの’ というときに、’生物’は具体的なものになりそうですね。
動くものの中には機械も含まれます。動くもの=生物ではなく、生物⊂動くもの ですから。
具体と抽象が少しわかってきました。
「実行に必要なのは何か」 という章からは、このようなことが書かれています。
「最も理想的なのは、具体レベルと抽象レベルを階層化させ、「つながった目標」になっていることです。」
どういうことでしょうか。
例えば、
「幸せになりたい」 という目標があるとします。
そして次は、幸せになるために、自己実現を達成したい。
その次に、ある能力を伸ばしたい。
英語にしよう。英語を話したい。
来週の月曜日にオンライン英会話をしたい。...
抽象度の高い目標ほど、志は高く見えます。反対に、具体性がある目標ほど現実感があります。
具体と抽象を行き来することで、長期的なビジョンと短期的な目標を捉えることができる気がします。
芯がある人というのは、抽象度の高い目標と具体的な事柄をしっかりと見ている人なのではないかと思います。
(パリで優雅なひとときを過ごしたい。
それなら航空券を買わなきゃ。
航空券を買うにはお金をためないと。
よし、月々の出費を抑えるためにあれ費とこれ費を抑えよう。
明日から、三食自炊だ....)
この二つの事柄を見るというのは 「システム思考」 にも出てくるようなものに似ています。(長期的な視点と、短期的な視点を持って、私たちは日常を過ごしています。)
計画を組むときは、いつ、何を、どのように、どこで
などを、より具体的に書くと良いようです。
具体性があるほど、実行に繋がりやすいようです。
例えば、'また今度する' よりも '今週の金曜日の朝にする' の方がより具体的で実行の確率は高くなりそうです。
抽象と具体の使い分けが大事みたいですね。
「ルールや理論、法則は、大抵の場合は具体的に起こっている事象の「後追い」の知識だったはずです。ところが、一度固定化された抽象度の高い知識(ルールや法則等)は固定観念となって人間の前に立ちはだかり、むしろそれに合わない現実のほうが間違いで、後付けだったはずの理論やルールに現実を合わせようとするのは完全な本末転倒といえます」
(ここで言われている後追いの知識とは、異なるかもしれませんが、
行動の後の意味づけは、人間の心理的行為だと思います。
自己知覚理論のように、私たちは行動を意味に結びつけます。しかし、その行動の要因は本当にその意味からでしょうか...)
後追いの知識というのは、例えば歴史を見れば分かりやすいかもしれません。
織田信長は、新しい火縄銃、及び、それに適した戦術を用いて、武田軍に勝利をしました。この事例からは、新しい戦術、新しいものは、古いものを凌駕すると言うことが言えるかもしれません。
しかし、
常に新しいものが最善とは限りません。
新しいものはコストがかかるかもしれませんし、新しいものだからといって上手く使いこなせるかも分かりません。
ただ、他の相手を出し抜くためには、他と違う手法を用いるということが有効だと言える、一つの例だと思います。
もう少し話を広げると、古くからある信条や教えは広く使われやすい抽象的なものが多い気がします。
「彼を知り己を知れば百戦殆からず」
(かれをしりおのれをしればひゃくせんあやうからず)
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